この暴君、恋すると手に負えません
「場所を変える。俺についてこい」
「……かしこまりました」
帝様は私の横を通り過ぎると、そのまま扉を押し開けて行き先も言わずに歩み出す。主人に従う事しかできない執事の私は、ただその背中を追うように続いて歩いていくしかなかった。
--わざわざ場所を変えてまで、一体何の用があるのだろうか。
そして帝様の足が止まった部屋の前は予想もしない場所だった。私は眼鏡をかけ直しながら思わずその部屋を二度見してしまうが、やはり間違いないここは--……。