この暴君、恋すると手に負えません
この姿を帝様に見せる勇気がない私は、フィティングルームの中で深い溜息を吐き出した。
すると見兼ねた帝様が歩み寄る音が近づいてきたのだ。
--あぁ、この姿を見られてしまうのか。
私が覚悟して目をきゅっと瞑っていたが、意外にも帝様は強引に開けることもなく、カーテンの前でぴたりと立ち止まった。
「……桐生。お前に話しておきたい事がある」
「……何ですか?」
突然真面目なトーンで話されると、聞く側の私はつい構えてしまう。その時に耳元で揺れるブルーサファイアのピアスを鏡越しで見つめては帝様の言葉に耳を傾けたのであった。
「お前がつけてるピアスの事だ。お前が朱鳳家に来た時に俺が贈ったんだが、実は用意したのは俺じゃない」
「どういう事ですか?」
「そのピアスをお前に贈ってほしいと、光希に頼まれたんだ」
--え?光希様が?
「だが俺からの贈り物だという事にしてほしいと頼まれてな。ずっと黙ってたんだが、お前が肌身離さずつけてるのを見てやはり伝えるべきだと思ってな」
私は思わずカーテンを思いっきり開けた。