この暴君、恋すると手に負えません
「あのお弁当が最後なら、食べておけばよかったな……っ」
私は下唇を噛み締めて、おばあちゃんの手をぎゅっと握った。しかし、おばあちゃんが私の手を握り返す事はなかった。
しかし面会時間の終了を知らせるアナウンスにふと我に帰る。ゆっくりと握り締めた手を離して立ち上がり、未だに眠り続けるおばあちゃんの顔を見つめた。
「......おばあちゃん、今までありがとう」
最後に感謝の言葉を言い残し、私は涙を堪えて背を向けた。一歩一歩、おばあちゃんから離れる度に今までの思い出が蘇り、胸が締め付けられる。
病室の扉に手をかける手が震えるが、私はそのまま一度も振り返らずに部屋を後にした。