この暴君、恋すると手に負えません
そして自販機が置いてあるロビーの前を歩いていると、其処には月夜に照らされて窓を見つめる暴君の姿があった。
ーーもしかしてずっと待ってたの?
あれから三時間以上も経ってるのに......。
「......虹美?」
窓に映る私に気づいた暴君は振り返って、ゆっくり歩み寄った。
「......待ってたんですか?あれからずっと」
「あぁ」
「......別に貴方には関係ないじゃないですか。帰ってもよかったのに」
「帰ろうが待ってようが、それは俺が決める事だ」
しかし次の瞬間、私の視界に映る暴君の姿が一気に歪み始めた。
そう、ずっと我慢していた涙が今にも溢れそうになっていた。おばあちゃんが心配しないように、押し殺していた涙が今さらのように滲み出す。