この暴君、恋すると手に負えません



私は喉が枯れるほどたくさんの涙を流したが、その間も暴君は何も言わずにずっと私を抱き締めてくれていた。

その温もりに私は救われた。
こんなにも安心して涙を流したのは、きっと両親が亡くなった時以来な気がした。

とても人様に見せられないほど酷い顔をしているに違いないが、暴君は何も言わずに泣き止んだ私を車に乗せた。

帰り道、静まり返った車内で最初に口を開いたのは私だった。

「......さっきは泣いてすみません」
「気にするな、最初にそう言ったはずだ」

赤信号に変わり車が止まると暴君は私の頭をぽんと撫でた。


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