この暴君、恋すると手に負えません
「......さっき、おばあちゃんがもう私の名前呼んでくれないと思うと、すごく悲しくなったんです」
「......虹美?」
「虹美って名前をつけたのはおばあちゃんだったんです。私が生まれた日は朝から雨が降っていて、産まれた私を抱いた時には止んで綺麗な虹が見えたらしいです。その虹があまりにも美しく見えたそうで、それで虹美という名前にしたって小さい頃に聞きました」
私、何でこんな話をこの男にしてるんだろう。おばあちゃんが亡くなったショックで、どうかしちゃってるのかな。
「すみません、こんな話なんかどうでもいいですよね……」
「んなこと思ってねぇよ。いいセンスしてんじゃねぇか、お前のばあさん」
暴君の口からそんな言葉が返ってくるなんて思わなかった。
「ありがとうございます」
だからかな。
その言葉が嬉しくて、また涙が溢れそうになってしまったんだ。