この暴君、恋すると手に負えません
「虹美、ついてこい」
そして暴君に言われるがまま、私は奴の部屋へと足を踏み入れる。其処は白を基調にした意外にもシンプルな内装であった。
ただやたらと目立つキングサイズのベッドを除いては。
私と暴君は一人分のスペースを空けてソファーに腰を落とした。すると暴君は私の顔を不意に覗き込んだ。
「少しは食べれそうか?」
「......すみません、あまりそういう気分ではないです」
「そうか、お前が喜ぶと思って用意させたんだが仕方ねぇな」
そして桐生さんが再び現れると、私たちの目の前のテーブルに蓋をした料理皿を置いた。
「......本当にお召し上がりになるのですか?」
「あぁ、世話かけたな」
「いいえ、このくらいのこと出来て当然です。朱鳳家の執事ですから」
桐生さんは深々とお辞儀をすると、そのまま静かに部屋から出て行った。