この暴君、恋すると手に負えません
その横でずっと黙って見ていた暴君は、何処かほっとしたように小さく笑っていた。
「あの、朱鳳さん?」
「帝でいい」
「......帝さん、ありがとうございます」
「礼を言われるほどの事はしてねぇ」
すると暴君は不意に私の唇に自分の唇を重ねた。私は突然のキスに思わず目を丸くした。
唇が離れた瞬間、暴君はあの妖艶な瞳で私を見つめ親指で私の唇をなぞる。
「礼はこれでいい」
まるで、私で弄ぶ事を楽しむように意地悪な笑みを浮かべる暴君に、不覚にも少しだけ鼓動が早くなるのを感じていたのだった。