この暴君、恋すると手に負えません
「虹美、資料は全部目を通したか?」
「あ、はい。色がついた名前と顔だけは一通り目を通しました」
「よし、パーティーは19時からだ。それまでは少し休んでおけ」
「......分かりました」
私は慣れない足取りで用意された自室へと足を運んだ。すでにキャリーバッグは部屋に届いていた。そしてクリーニング済みの暴君からプレゼントされたスーツに身を纏った。
スニーカーから革靴へと履き替え、髪をひとつにまとめ鏡の前で身だしなみを整えていた。ふとキャリーバッグの取っ手に何がメモのようなものが挟まっている事に気づく。
中を開けるとこの朱鳳家の屋敷内の案内図が書かれていた。恐らく桐生さんが用意してくれたのだろう。
そしてその案内図を片手に部屋を出るなり、執事室へと足を運んだ。