この暴君、恋すると手に負えません
「なんだ?こんな男臭いとこに女がいるじゃねぇか」
すると暴君は、私の顎を持ち上げて顔を寄せながら問い掛けた。
「お前、名前は?」
「......美作虹美(みまさかさいみ)です」
「へぇ、よく見りゃ可愛い顔してんじゃねぇか」
ーーは!?何言ってんのこの人!!ってかその手を今すぐ離せ!!
と、心の中で反発しながら私は視線を逸らした。
すると暴君は、私のお弁当を見るなりこう呟いたのだ。
「なんだこれ、庶民くせぇ弁当だな。お前が作ったのか?」
「いや、これは…...っ」
その時だった。
暴君は私が箸でつまんだ卵焼きを、自分の口の中に入れたのだ。
よりによって私が一番大好きな卵焼きを横取りするなんて。