七色セツナ。1
第5章 元カノ
噂話は、人目を気にして
春の爽やかな気候は
瞬く間に立ち去って
天気予報では、
今年は例年より
早く梅雨入りしそうだと、
気象予報士が告げ始めた6月。
今日も空は曇天で、
夏服のシャツでさえ
この湿気で、肌に張り付いてくる。
「不快指数とは、よく言ったもんだ……」
あと10分程で、
昼休みが終わることを告げる
チャイムが鳴る。
「次の授業は、なんだったっけ……?」
屋上の給水タンクの上で
寝転びながら
灰色の空に吸い込まれていく紫煙を、
ぼーっと見ながら
恭弥は、ボソッと呟いた。