七色セツナ。1
「……」
人間って、
あまりにも美味しいと
無言になると悟ったのは
花凛ちゃんの手料理を
食べ始めてからだ。
「恭弥は
バイトの時、何を食べてるの?」
何も知らない花凛ちゃんは、
無邪気な顔で聞いてくる。
「コンビニか、スーパーの弁当。
あとは...ファストフード。
・・・バイトがない日でも一緒だよ……
子供の頃から……
ずっと変わらないよ」
「え?」
「ウチ、離婚してんだ。
俺が小学校にあがる前に、
母さん出てってさ。
親父は
長距離トラックの運転手だから
家にほとんどいなくて。
んで、ジイさんも一緒に
暮らし始めたんだけど
当然料理なんて、できねーし。
ジイさんが
空手を教えてたから、俺も習って……
でも……
そのジイさんも2年前に死んで……
あーーだから……
花凛ちゃんが作ってくれるのが、俺の唯一の……」