七色セツナ。1
「・・・花凛」
改札の向こう側、
駅舎の入口に
学ランを着た男が立っていた。
「・・・英二……」
その場所だけ、
時が止まったようだった。
たくさんの人が
行き交う中、そこだけが動かない。
「朱羽、ごめん。
やっぱり、ここで……」
花凛は小さな声で囁くと、
朱羽から荷物を受け取り、
改札を抜けて行った。
朱羽は、動けなかった。
言葉も発せなかった。
花凛が、その男の所へ歩いて行く。
一言二言、言葉を交わす。
二人の表情は見えない。
その男は
花凛から荷物を取った。
2人が一緒に歩き出した。
その男の背中を睨みつける。
いつの間にか
拳を作っていた手に、更に力が篭った。
朱羽は
2人が見えなくなるまで、
そこから動かなかった。