七色セツナ。1
「そうそう!
嬉しいな、覚えててくれて。
・・・名前も覚えてる?」
蒼夜が
花凛の顔を覗き込む。
「あっ...えっと……」
「え!?
覚えてないの!?
・・・俺、同じ人に2回も
自己紹介するの、初めてなんだけど……」
「す、すみません……
あ、あの私
物覚えが悪くて……」
「恵衣だ...」
その部屋の、
時間が止まったようだった。
それまでも、蒼夜が
にこやかに女性スタッフに
声をかけているのを
物珍しく見ていた
パーティールームにいた面々だったが
「恵衣さんが……
自ら名前を……」
恵衣と花凛以外は
驚いたまま、固まってしまっている。
「呼んでみろ」
「?
恵衣さん……?」
花凛が名前を言うと、
恵衣はフッと笑った。
「・・・中山さん」
「・・・なんだ?蒼夜」
「初めて見る光景です」
「俺もだ」