七色セツナ。1



「これは……

ヤバイんじゃないですかね?」


「と、すみません。

お名前を、教えて頂けますか?」


花凛が蒼夜に聞いた。


「え!?」


急に自分に振られ、
蒼夜がアタフタする。


「こいつの名前なんて、聞かなくていい。

俺の名前だけ覚えろ」


少し不機嫌になった、恵衣。


「もう、覚えましたよ?

それで……」


「あ、蒼夜。

蒼夜です。

よろしくね?」


「チッ」


恵衣の舌打ちが聞こえた。


「お飲み物は、どうしますか?」


「ビール」


「ウーロン茶で」


「すぐに、お持ちします……

あ……」


花凛が
ソファに目を止めた。


「ちょっと失礼します」


ソファに投げ出された
ジャケットを手に取ると、
軽くシワを手で払い
後ろの壁側に用意されている
ハンガーに掛けた。


その行為を、
恵衣も蒼夜も見つめていた。




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