七色セツナ。1



花凛が、ボブの女の前の
グラスに手を伸ばすと
その手が弾かれた。


「あっ」


グラスの中の氷が、
女の足の上を滑っていった。


「きゃっ!

何すんのよ!!」


「すみません!」


「すみませんじゃないわよ!

スカートにも
かかったじゃない!!」


「すみません!

すぐに
おしぼりをお持ちします」


「ふざけんじゃないわよ!!

大体、あんた...」


「おい」


地を這うような、低い……


それでも良く通る声が、
この部屋を支配する。


そこにいた者達が、
声のした方へ恐る恐る目をやる。


始めに女に
声をかけた時よりも、
更に鋭い目の鬼が立っていた。


「待て、恵衣。

花凛ちゃんを外に出す」


蒼夜が
恵衣にだけ聞こえるように言うと


「花凛ちゃん、俺も一緒に行くよ」


蒼夜が
花凛の元へ駆け寄った。



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