七色セツナ。1
「藤谷くん……」
その女は、ヨロヨロと立ち上がり、
「私の家、そこのマンションなの……
めまいがするので、
そこまで送ってくれませんか?」
正直、面倒くさいという気持ちが
なかったわけではなかったが
目の前に体調が悪い奴がいて、
しかもマンションまでは
あと少しという距離だ。
「歩けるのか?」
「はい、すみません。
迷惑かけて」
そこで、おんぶしろとか、
抱っこしろと言われた訳でもないし
俺は、その女の家まで一緒に行った。
そこで帰ろうと
来た道を戻ろうとした時
玄関で、その女がよろけた。
「今の時間は、両親が居ないんです。
すみません、私の部屋まで……」
いい加減、面倒になった俺は
「どこだ?部屋」
と、女の腕を引っ張った。