Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
(7) 幸せのかたち
ーー なるほど玉ねぎというのは、こうやって外の皮で自分を包み、
本当の姿をかくしているのね ー ー。
カサカサとかさつく茶色い姿は見かけだけ、本当は透きとおる白さと
瑞々(みずみず)しさをもっている。
「皮を剥(む)いてつかうんだってことすら知らないなんてねぇ」
と、玉ねぎの皮をはがしているミュアの手もとに
ヴェイニーのため息がおちる。
「もし、もしもだよ。召使が誰もいなくなって、自分で料理して
食べるしかないってなったら、どうするつもりだったんだい?」
「考えたこともなかったわ」
鍋をかき回す手を休めず、ヴェイニーはふぅーと大きく息をはき
「王妃様っていうのは難儀(なんぎ)だね。餓死するより他、
方法を知らないなんてね」
としみじみ言った。