Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
「ジョルジュ殿下が戻られたなら、グレイ陛下は
どうするんだろうな」
「いくらなんでも王位を継いでから1年もたってないんだぞ」
「でも、本当なら国王になるのはジョルジュ殿下だろう?」
……………
「グレイ陛下もハンサムでワイルドさがあって格好いいけど、
ジョルジュ 殿下はさすがに品があるわよね」
「そりゃあやっぱり、正真正銘の王子さまですものねえ」
様々な噂が王城のあちこちでささやかれるようになった。
ミュアの耳にはいることはなかったが、ジョルジュがもどってから、
なんとなく王城が落ち着かない雰囲気だということはミュアも感じている。
それにグレイが厳しい顔をしていることが多くなった。
トラビスをはじめ、数人の者と何事かをうちあわせ、
考え込んでいることも多く、疲れているようにも見える。
ミュアと一緒のときも心ここにあらずといった風で、気のない返事をし、
そしてはっと気づいたように、ミュアにむかってぎこちない笑みをむける。
ヴェイニーの館にいたときの、心からの笑顔はもうどこにもなく、
夜はミュアが眠ったあと寝室に来て、朝はもう姿がなく、
長椅子の上の夜具が乱れていて、何時間かはここで過ごしたのだ
ということがわかるだけ。
聞きたいけど、聞けない。
側妃をむかえたほうがいいのか悪いのかも、もうわからない。
近づいたと思った距離は、また遠くなり、無くなったと思っていた壁は、
見えなくなっただけで、やっぱりある。
強固だった石の壁が、ガラスになっただけで、姿は見えるのに、
触れようとしても、少しも触れられなかった。