Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
   

 朝食の席で

   
    「しばらく城を留守にする」


 
 突然グレイがそう言った。


   
    「どちらに行かれるのですか」
    「国内の視察だ、冬は終わり山の雪も溶けはじめた。
     そろそろ動くときだ」


 たしかに日も長くなり、暦は春を迎えようとしている。


   
    「いつお戻りになりますの」
    「さあ、わからない」



 いつ帰るかわからない、などという視察があるはずがない。

 ミュアは、はっとグレイを見た。


 言葉そのものも変だが、妙に不安をかきたてる響きが
 グレイの言葉には含まれている。


   
    「陛下…あの……」



 ミュアの言葉を聞くまいというように、グレイが急に立ちあがる。


   
    「なにも心配することはない」



 そう言い、ミュアの頭にそっと手をおいて、グレイは背を向けた。



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