Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜


 城内は、静まりかえっている。

 さすがにこの時間は、もう誰もが休んでいるのだろう。
 時計が時を刻む音だけが、大きく聞こえる。


 ミュアはいつかのように寝室の長椅子の上に正座し、
 じっと部屋の入り口を見つめている。

 ときおり眠くて瞼(まぶた)がさがってくるが、頭をふって眠気を飛ばし、
 ミュアはグレイを待ちつづけた。




 キィと部屋のドアがあいた。
 グレイはミュアの姿を見るなり、苦笑とも呆れともつかない表情をうかべ
 近づいてきて


   
    「遅くまでおきていると、明日の朝がつらいぞ」



 と言った。


   
    「陛下を待っていたから、遅くなったのですわ」
    「待つ必要はない」



 短く答え、グレイはミュアの手をひき長椅子からおろそうとする。


 ミュアは素直に従った。

 ベッドまでいき、グレイがベッドにはいるようミュアをうながしたが、
 ミュアは今度はその手をとめて、グレイを見つめた。


   
    「陛下の御心の中にあることを、どうかお話ください。
     心の内をなにも話してくださらないのは、私が王妃としても、
     妻としても至(いた)らないからですか」
    「そうじゃない」
    「だったらどうして? 私たちは夫婦でしょう
     国と国との政略的なもので、望まない結婚だったとしても、私は……
     今の私は……」
    「ミュア」




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