Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 
 目覚めたときはひとりだった。


   
    「国王は王城から逃げだしたんじゃないか」
    「そうかもな」



 噂は大きな声で、はばかることなく交わされるようになり
 ミュアの耳にもはいるようになった。
 

 
 そんなわけないじゃない!!

 聞こえてくる陰口にミュアは唇をかみしめる。


 アルメリオンからはすこし離れたところにある小国、モンパル公国の
 大使との昼食会を終え部屋に戻りながら、
 ミュアは心の中でしかめっ面をした。

 
 亡くなったウォーレス陛下はグレイを次期国王とし、
 大祭司は神の前でグレイを国王と認め、その頭に王冠をのせた。


 なのにデマのような噂がながれ、今の昼食会でも貴族たちは、
 不在の王のかわりをつとめたにすぎないジョルジュが、
 まるで真の王だというような態度をとった。

 グレイはちゃんと戻ってくるし、けっして無能な王ではない。

 それがわかっているはずなのに、どうして貴族たちも他の者も、
 グレイを蔑(ないがし)ろにするのだろう。


   

    「ミュアリス王妃」



 呼びとめられ、ミュアは立ち止まったが、すぐには振りかえらなかった。

 声で、誰が自分を呼びとめたかわかったからだ。
 呼吸を整え、心を落ち着かせ、笑顔をつくってからふりかえる。


   
    
    「ジョルジュ殿下」






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