Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
ミュアから話を聞き終えたクノエは、腕組みし、しばらく
じっと考えこんでいたが、腕組みをとくとミュアの目を
静かに見つめ、ミュアの両腕にやさしくふれて
きっぱりとした声で言った。
「ターラントの王女のときはともかく、王妃の今は、
勝手に城をぬけだすことは不可能です」
「そんな!!」
「ですが、ひとつだけ方法があります。
まず、唯一、行くことが許されているヴェイニーの館へ
適当な理由をつけて行く。
そしてヴェイニーに協力してもらい、館で数日すごして
いる風を装って、館から、ボドナ鉱山をめざす。
ありがたいことに、ボドナ鉱山はヴェイニーの館から
近いです」
「でも、鉱山に行ってからはどうしたらいいかしら」
「もちろん、王妃様を案内できる人間を用意いたしますわ」
きらりとクロエの目が光った。
その日すぐというわけにはいかなかったが、次の日には
ヴェイニーの館へ出発することができた。
以外にもデリアが簡単に承諾し、便宜(べんぎ)をはかってくれたからだ。
今は、王妃が城にいないほうが余計なことを知られないですむと、
彼女は思ったのかもしれない。
そして館に着いた午後には、トラビス=リードがヴェイニーの館を訪れた。
「今は余計なことをしている余裕など、本当はないんだけどね。
クロエ嬢のたっての頼みだと聞いたから」
そう言いながら、クロエについて居間に足をふみいれたトラビスは
部屋の中の異様な雰囲気に足をとめた。