Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 その話を聞いた王妃が、” 年の近い話し相手になるものをミュアの側に
 置きましょう “ と言いだし、クロエがミュア付きの侍女となったのだった。


 侍女となっているが、クロエは由緒正しい貴族の娘だ。
 だが、両親亡き後、後を継いだ兄が花嫁を迎えるからと、城勤めを願い出て
 いたらしい。

 ミュアより三つ年上の十八歳。
 結婚適齢期だが、結婚は断固拒否する!!と言って、働くことを選んだ
 変わり者だ。
 小柄で、大人しい顔立ち。
 だが、それは見かけだけだとミュアが知るのは、ずいぶん後のこと
 だけれど……。




 出会って一週間もたつころには、クロエはミュアが元気をなくした原因を
 正確に把握んでいた。
 だからクロエはミュアをその日、王城の今は使われていない西の離れにつれていった。
 

 離れの建物は、ミュアの祖母が晩年をすごしたところで、静かにすごしたい
 からと、隠されるように高い常緑樹にかこまれている。
 今は無人の建物はぴっちりと戸がしめられ、もちろん建物の前の広い庭にも、
 ミュアとクロエの他は誰もいない。

 さぁーと風が吹き、足元の草を揺らす以外には、なんの音もなかった。



   「なぜ、こんなところに連れてきたの?」



 言われるままにここにやってきたが、クロエの真意がわからず、ミュアは庭の
 中ほどでたちどまるとクロエの方をふりかえった。
 わずかに離れたところに立ったクロエはミュアを見て、微笑んでいるだけだ。

 私の声が聞こえなかった訳ではないだろうに、と思いながらもう一度ミュアが
 口を開きかけたとき、背の低い、しなやかな身体の生き物が常緑樹の陰から
 あらわれて、こちらに向かって駆けてくるのが見えた。


 その獣はぐんぐん近づいてきて、呆然と立っているミュアに飛びついた。


   「シル、ヴィ……?」




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