Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
寝つけず、その鈍い明かりをぼんやりと見つめていたミュアの頭に、
突然、冴え冴えとした月をうつす谷川に、身体半分をひたし
倒れているグレイの姿がうかんで、ミュアはぎゅっと目をつむった。
もし凍てつく月の下で、グレイが寒さと痛みに苦しんでいたら
どうしよう。
こうしている今にも、わずかな息が止まってしまうほどだったら
どうしよう。
それとも、もう、すでに……。
ひゅっと吸った息が苦しくて、不安が胸を押し潰すほどおおきくなって、
閉じた瞼のはしにじんわりと涙がにじむ。
一緒の部屋で寝ているクノエに泣き声を聞かれないようにと、
毛布を鼻の上までもちあげたとき、きつく毛布を握りしめている手を
ぺろりと温かい舌で舐められて、ミュアは目を開いた。
薄闇の中で、シルヴィの目が鈍く金色にひかっている。
ミュアがだまって毛布をもちあげると、シルヴィはすっと
中にもぐりこみ、ミュアの身体にしなやかな身体をそわせた。
不安が ー ー シルヴィ温かさに ー ー 少しずつ溶けていく。
不安になっちゃだめ。
必ずグレイを見つけ、二人一緒に王城に帰るんだから。
待っていて、グレイ、私があなたを助けに行くから。