Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
次の朝早くに出発し、途中で馬車をおりたミュアたちは、
グレイが襲われて谷川に落ちたところを中心に捜索を開始した。
ミュアもクロエも、細身のパンツにブーツをあわせた乗馬服姿で
リード家から遣(つか)わされた人達にまじり歩く。
トラビスはもっぱらオニクスの後を追っているが、
身軽に山肌を駆けあがることも、岩から岩に楽々と飛びうつれる
わけもなく、それでも彼は必死にオニクスについていき、
オニクスはオニクスで、時々、息も絶え絶えのトラビスをじっと
ふりかえって見ては、彼が追いつくのを待っている。
「はっ、はっ、はぁ、……なぁんか、すっ、ごく、
……オニクスに、はっ、馬鹿にされてるような、はっ、……
気がするな」
息もきれぎれにそう感想を言いながら、崖をよじ登ったトラビスが
でたところは次の村のはずれの水車小屋の近くだった。
先についていたオニクスが、じいーっと水車小屋を見ている。
「ど、どうした、 オニクス、あのっ、はっ…… 水車小屋が、
はっ、気になるのか?」
そうだ、というようにオニクスがトラビスを見る。
そして、軽い早足で小屋に向かっていく。
トラビスはオニクスを追って小屋にむかいながら、すばやくあたりに
目をくばり懐から拳銃をとりだした。
まわりに人影はない。
あの小屋はすでに部下が捜索を済ませていたはずだが、
オニクスは迷わず、まっすぐ小屋にむかっている。