Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜


 だが、小屋の数歩手前でオニクスは立ちどまり、トラビスを
 ふりかえった。

   

    「よし、わかった。確かめてくるからな、ここにいろよ」



 小声でオニクスにそう言い、足音をしのばせてさらに近づくと
 トラビスは閉じられた粗末な扉から中の様子を窺った。


  ー ー 誰か居る ……。


 中から話し声が聞こえるが、村の人間が中で作業をしている
 ようではない。


 建てつけが悪そうな扉の隙間から漏れ聞こえる声に、
 トラビスはさらに注意深く耳をすませた。


   
    「くっ、だめだ、そんなに強くすると……」



 !! ー ーなにかを堪えるような、その苦しげな声はグレイのものだ。

 だがすぐに若い女の声も聞こえた。


   
    「あ、でも、強くしないと」
    「だめだ、そこは……さわらないでくれ」
    「で、でも」



 トラビスは……、……、戸惑った。

 声はたしかにグレイのもので、敵に捕らえられているといった
 感じじゃない、でも、なんかこう、妙に……
 
 会話が艶っぽくないか?


 どういうことだ?






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