Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜


 恐縮してクノエに包帯をわたし出ていった村娘にかわり、
 グレイの身体に包帯を巻きながら、
 ミュアはこれ以上はないほど緊張している。



 グレイを助けた端の村の村長は、自分たちが争いにまきこまれる
 のを恐れて、グレイの身柄をかくして手当てをしていて、
 グレイも明日には密かに村をでるつもりだったという。



 そのことを聞いたトラビスは、引き続きグレイを捜索している
 ふりを続けさせるために、部下たちのところにいったん戻ると言い、
 クノエもオニクスやシルヴィをつれてトラビスについて行ってしまった。



 二人が気を利かして出ていったとわかるから、ミュアは今、
 余計に恥ずかしい。


 ともすると、巻かれた筒状の包帯を取り落としそうになる。


 だって、グレイの素肌が目の前にあり、包帯をまくことで裸の身体に
 腕をまわすことになり、まるで抱きつくような格好になっているから……。


 さっきだって抱きついたけれど、それは、生きていたことが嬉しくて、
 我をわすれてしまっていたからで、冷静になった今は、
 すべてがとてつもなく恥ずかしかった。


 なるべく素肌にさわらないようにとミュアは注意深く包帯を巻く。


 生々しい傷口が見えていたらそれどころではなかったろうが、
 ガーゼが貼られて見えないことで、ミュアの意識はつい、グレイの
 形のいい頭から続く長い首や、しっかりとした骨格がわかる肩のライン、
 そしてひきしまった筋肉の腕や胸に、いってしまう。
 
 
   なんて美しいのかしら……。


 この人の身体から立ちのぼる気配は、やっぱりオーガのそれと
 よく似ている。


 しなやかで、強く、目を奪われるほど美しい……。


 
 座った状態で、すこしだけうつむき、ミュアに背を向けて
 いるからグレイの表情はわからない。

 ミュアはむきあった姿勢ではないことに救われた気持ちになった。

 グレイの美しさを意識すればするほど、顔があつくてたまらないし、
 自分が今、いったいどんな顔をしているか想像できるようで、できないが、
 絶対他人には、とくにグレイには見られたくない顔!なのは!間違いない。








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