Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
だから、肩のところできゅっとしばって包帯をとめたミュアは、
ほっと安堵の息を漏らすと、すばやく離れようとした。
だが、それよりはやく、肩越しにのびてきたグレイの手が、
ミュアの手を掴む。
「ありがとう」
「い、いえ」
ミュアの指先を捕らえるように握っているのに、グレイは
こちらをむかない。
まだ背を向けたまますこし俯いて、でも、ミュアの手をつよく握る。
「よ、よかったわ、無事で」
沈黙が苦しくて、ミュアは早口でそう言った。
「探しに来てくれたんだね」
グレイの声は落ちついている。
「ええ、オニクスならきっとあなたを見つけるって
ヴェイニーが言ったの。
私もそう思ったわ、それを信じてここまで来たの」
「勇ましい乗馬服姿だ」
ミュアは、恐ろしい死の想像に怯えながら、それでも決意した
昨日の夜を思い出した。
「絶対にあなたを見つけて、いっしょに王城に帰るんだって
誓ったの。
あ、あなた、が……無事で、ほんとうに……よ、かった」
胸がふるえ声も震える。
グレイがゆっくりとこちらをむく。
印象的なゴールドの瞳にうつったのは、ミュアの頬を溢れ(こぼれ)おちた
一筋の涙だったろう。
腰にまわした手でミュアをひきよせ、グレイはミュアの身体に顔をよせた。
「嬉しすぎて、言葉がみつからない」
くぐもった声でグレイがそう言い顔をすりつけ、ミュアはその頭を掻き抱く。
紅い癖のある髪に指をうずめれば、触れないでいる、なんて、もうできそうになかった。
このままずっと、こうしていたい。
溶け合ってひとつになってしまいたい……。