Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
シルヴィはもう小さくない。
立派な成獣になっていて、後ろ足立ちになると、ミュアの背を越すほどだ。
そんなシルヴィにのしかかられて、ミュアはシルヴィとともに仰向けに
たおれた。
「ちょ、ちょっと……シルヴィ……」
のしかかったシルヴィが、ぺろぺろとミュアの顔や首すじを舐める。
だんだん、くすぐったくなって、ミュアは笑い声をあげていた。
「や、やめて、ふふふ……あはは」
触れ合っている身体があたたかい。
シルヴィの舌がくすぐったい。
シルヴィの開けっぴろげな親愛行動がうれしくて、ミュアは子供みたいに
声をあげて笑う。
そのうち涙がでてきて、気がつくとミュアはぽろぽろと大粒の涙を
ながしていた。
「シルヴィ!」
名を呼んで、あたたかい身体を抱きしめる。
シルヴィに会うのは久しぶりだ。
あんなにいつも一緒にいたのに、ずっとレッスン、レッスンで会えなかった、
いや、会わないでいた。
オーガを身近におくのは、レディとしてふさわしくないと思っていたから。
シルヴィを抱きしめてオンオン泣いて、やっと涙がおさまった頃、クロエが
ミュアの手を引いて身体をおこしてくれる。
「すっきりしましたか?」
「クロエ……」
「思いっきり泣いたり、笑ったり、時にはそういうことも必要なの
ですよ」
ミュアの右手を握ったまま、クロエがにっこりとする。
「そして、必要な時に、必要な場所で、レディとしてふるまえば
いいんです」
「それでいいの?」
「ミュアリス様が思っているようなレディであれば、それで
十分です。
でも、本当のレディはそうではありません。
そんなに簡単になれるものでもありません」
「うん……」
ミュアは元気を取り戻し、それからもレッスンを続けた。
でもこれまでとは違って、いつもシルヴィをそばにおき、時々ふっと
クロエとシルヴィとともに行方をくらますようになったけど。