Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 
 すっかりおとなしくなりうなだれたジョルジュたちを、
 兵士たちが拘束し出て行けば、
 小屋の中にはグレイとミュア、そしてウォーレスだけになる。


 踏み散らかされて乱れた藁の山、床にひろがる血溜まり。

 なにがあったかそれらを見ればわかるのに、ミュアの中では
 すべてが現実味を失っていた、ウォーレスがあらわれたことで。


   
    「ご苦労だったな」



 そう言いながら、ウォーレスはグレイへと歩みより、
 笑顔でぽんとグレイの肩をたたく。

 そうするのが当然だという顔と声。

 自信に満ちた揺るぎないその姿に、やはり彼はウォーレスなのだ、
 すべて現実なのだとわかる。


   
    「 ……」



 グレイは返事をしなかった。
 それに…… 


 驚きが落ちついてくるとともに、妙な違和感を感じ、ミュアは
 不安になった。
 
  グレイ? なぜ、そんな顔をしているの?

 彼は、最初の頃のように、まるっきり感情のない顔をしている。


 剣を持った男たちと戦ったせいで、包帯に血が滲み痛々しそうなのに、
 その痛みさえ感じていないような顔で、ウォーレスにもミュアにも
 視線をむけようとはしない。

 死んだはずのウォーレスが生きて目の前にいるのに、
 彼はすこしも驚いていない。



 グレイの肩を労うようにたたいたウォーレスは、
 今度はミュアの方へ顔をむけた。


   
    「ひさしぶりだね、ミュアリス姫」




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