Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
もともと研究者肌だったジョルジュは、国力云々という
ことよりも、今まで誰も見たことがない、より精強な大砲を
開発したかっただけだった。
「だから最初は見のがしていた。研究だけなら問題はない。
だが、その研究が金を生むということに目をつけた貴族の
何人かが、ジョルジュを かえてしまった」
その貴族たちがはっきり誰だということがわからないまま、
ジョルジュが、” 遊学のため “と、もっともらしい理由をつけて
東大陸にむけて出発してしまい、早急に手を打たねばならなくなる。
「だから私は、自分が死んだことにし、グレイに王位を譲った。
そうすれば彼らは油断し、正体をあらわすと思ったからだ」
「グレイ陛下は……すべて知っていたのですね」
「もちろん。王位もすべて一時のもの。計画が成った後は、
わたしが王にもどることも彼は承知している。」
「わたしとの婚姻も必要なことだったのですか?」
「一番の理由は、グレイが王だと認めさせるためだった。
ターラント王女を妻としたからには簡単に王位は奪えないからね。
彼はたしかに父の子で、王子だが、王位を継げる資格が薄い。」
「薄い?」
ウォーレスの顔になんともいえない表情がうかんだ。
「彼の母親は、南方の島からきた身分の卑しい踊り子でね。
アルメリアではそれは、よく知られた王家の恥であり秘密なんだよ。
だから誰もが、グレイが王家の血を継ぐのはふさわしくない
と思っている」
「そんな……」
ミュアは絶句した。
おかしいとは思っていた。
国王グレイをとりまくモノに。
「あなたを騙(だま)し、そんな人間と結婚させたことは、
申し訳ないことだと思っている。
だが、計画を相談している時間はなかったし、話したところで、
ターラントの国王陛下にも、あなたにも理解してもらえるとは
思えなかった。
わたしもつらかったよ、あなたを手放すようで。
でも一時のことだと自分をなだめ、グレイには子をなすような
ことはしないと誓わせそれでもと、妊娠しなくなる薬をお茶と
偽って飲ませるようにした。
あなたの純潔は守られ、私は…… やっと、あなたを王妃として
迎えいれることができる」
くらりと眩暈がし、ミュアはきつく目を閉じた。