Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
(10) 最後の夜

   

    「どうして……」


 衛兵が扉の外にたつ閉じられた王城の一室で、ミュアは呟いた。


 しばらくはこの部屋の中だけですごしてもらいたいと
 ウォーレスに言われ、ミュアは自由に王城の中を歩けない。



 グレイがどうしているか、ジョルジュがどうなったのか、
 再び王が変わり、なにがどうなっていくのか、
 ミュアにはなにひとつわからない。



 冷めた笑みが口端にのぼり、” どうして “ と問う必要はないのだと気づく。

 
 こうなるように決められていたのだから。



 貴族や、他の人たちのグレイに対する態度も、グレイの
 不可解な行動も、デリアが執拗にお茶を飲ませようとしたことも、
 今は、すべての理由がわかる。


 なぜ、グレイがミュアを抱かなかったかも……。


 そしてグレイが “ すべて納得していた “ という事実が、
 なによりミュアを悲しませた。


 最初から最後まで、彼はやっぱり “ 演じて ” いたのだ。

 でも…… あの、ヴェイニーの館での、数週間は……。


 ミュアは、ぼんやりとした視線を窓の外へむける。

 
 明るい日差しが、窓の外いっぱいに降り注ぎ、
 春の陽光に若葉が輝く。

 締めきっていて声は聞こえないが、鳥たちは高らかに、
 春を讃(たた)える歌を歌っているにちがいない。








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