Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
王城でのミュアの部屋が、西棟にうつされることになった。
新しい部屋は以前にもまして、豪華で、上品な、女性好みの
美しさが、すみずみにまでいきわたっている部屋だった。
ウォーレスの命令で、美しく活けられた花が毎日あたらしく
部屋を飾り、壁の絵画も数日ごとにとりかえられる。
春の花が咲きほこる、美しい庭がながめられるテラスで、
お茶をのみ、ときにはそこでウォーレスとともに、食事をする。
ウォーレスとお茶を飲んでいると、ときどき官吏があらわれ、
”急ぎの書類ですのでもうしわけありません” と、ひどく
恐縮しながらウォーレスに書類をさしだした。
そして彼らは、目をとおしながら指示をだすウォーレスの言葉を
拝聴し、慇懃に頭をさげて部屋からでていく。
誰もが、ウォーレスを国王として敬っているし、
それに応えるウォーレスの態度も立派なもの。
加えてミュアに対して、彼はいつもやさしく紳士的だ。
肩を抱きよせ、キスは軽く、頬か指先に。
ミュアを敬(うやま)い淑女としてあつかってくれる。
そして、庭の白薔薇が盛りをむかえるようになったある日、
ウォーレスはミュアの手を握り言った。
「あらめて、婚姻式をあげよう。私の妻になるために」
「でも、グレイ陛下は……」
ウォーレスの顔に、かすかな苛立ちがうかんだ。
「その名はもうない、もうだれも口にしない。
君はなにも気にしなくていい」
ミュアは “ はい “ とうなずいたけれど、
小さな棘のようなの痛みを胸にかんじた。