Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
キィと窓を閉めたデリアがふりかえる。
「いつものように水差しをお持ちしますか」
「ええ、お願い」
ミュアの返事にデリアが頭をさげ部屋からでていくと、
夜着にきがえたミュアの髪をすいていた侍女も、ブラシをおいて
一緒に部屋をでていった。
西棟にきてからは、デリアがまたミュアの身の回りのことを
取り仕切っている。
クロエはいない。
元の部屋にいたときも、だんだんとクロエがそばにいる日が
少なくなっていったが、西棟にきてからは一度も会っていない。
デリアにたずねると、クロエはウォーレスつきの侍女となるべく、
さる有力な貴族の家でレッスンをうけているということだった。
いつの間にか、侍女も大半のものが、新しい者にかわっている。
部屋に一人きりなったミュアは、鏡台の前の椅子からたちあがると、
窓辺まで歩いた。
今日はさっきまで窓が開いていたせいか、いつもなら、
すでにひかれているカーテンがひらいたままで、
薄く月明かりに照らされた夜の庭がよくみえる。
なんとなく心ひかれて、窓辺にたたずんでいたミュアは、
突然、バンと勢いよく開いた部屋のドアにびっくりしてふりかえった。