Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
   


    「すまない、こんな時間に」


 少し髪を乱したウォーレスがドアに手をついて立っていて、
 ” すまない “ と謝りながらよろけた足取りでミュアの方へと
 歩いてくる。



 そうして近くまできたウォーレスは、ぎゅっと強い力で、
 ミュアの両腕をつかんだ。


   
    「ジョルジュが妙なことを言うものでね」
    「ジョルジュ殿下が? 殿下は今は
     どうしていらっしゃるのですか」



 掴まれた腕が痛いと思ったが、ミュアは平静な声でたずねた。



 不快そうに、ウォーレスが眉間にしわを刻む。


   
    「あいつはもう、殿下じゃない。
    王族でなくなったうえに、死ぬのだと知って、
    訳のわからんことをほざいているだけと思うのだが……」



 顔を近づけたウォーレスは、酒臭い息を吐き、低い声で囁いた。


   
    「二人は愛しあっていたと、ジョルジュはいうんだ。
     短い間に、ミュアリス王妃は心変わりをし、
     グレイを愛したと」



 どうなんだ? と確認するようにウォーレスがミュアの顔をのぞきこむ。


   
    「やっぱりジョルジュの勘違いだろう?
     あなたはずっと、私を想っていたはずだし、
     グレイにだって、愛さないと誓わせた。
     王妃にきらわれる王になると、誓わせた。
     愛など育つはずがない!」

    「そ、そんなことを、誓わせたの」

    「ああ、君は私のものだ、グレイは、十分わかっていると言った」





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