Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜


 ミュアの脳裏に、グレイがミュアの胸に口づけたときのこと
 がうかんだ。


 あの時、彼は、
 ”自分のものだとしるしをつけた、今は自分のものだから ”
 と言った。


 じん、とその場所が、熱くなる。

 もうそこには、なんの跡も残ってはいないのに……。


    
    「くそっ!」



 そう低くつぶやき、ウォーレスの手がミュアの頬をとらえ、
 乱暴に口づけしようしたので、ミュアはもがいた。

 夢中で手をふりあげ、振りおろす。

  パシ!

 と乾いた音がして、ウォーレスの頬をぶったとわかったとたん、
 今度は、パン!と自分の頬をたたかれ、ミュアはよろけた。



    「なぜだ? 美しい部屋を用意し、数々の贈り物をおくり、
     私はあなたを大切にあつかってきた。 
     ターラントの王女であるあなたを、尊重してきた!
 
     そして、もうすぐあなたに、王妃の座もあたえる。
     まがいものではない、ホンモノの王妃の座だ。
     なのに、なぜ喜ばない、どうして、ずっと悲しそうにしている!」



 言うなり、ウォーレスはミュアの手をつかむと、ベッドまで引きずる
 ようにして歩き、ミュアを押し倒し、そのうえに覆いかぶさった。


 荒い息が首筋にかかり、力まかせに胸元を広げられそうになって、
 ミュアは叫ぶ。


   
    「私は! 私は、グレイに陛下の子を身籠っています!」


 ぴたっと動きがとまった。

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