Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
暗い城内を、ミュアはいつかの温室へと急いだ。
温室は、あのときと変わらない姿で、月明かりの中にあった。
戸をあけて入ると、やはり中はぬるく暖かく、
水の音も聞こえるが人影はない。
落胆と、もうグレイは去ってしまったのかという怖れと、
それでも、と思う期待ではち切れそうなほどの胸に
息をあげ、ミュアは中へと足をすすめる。
それほど進まぬうちに、とつぜん腕を掴まれた。
「誰だ?」
ーー グレイの声。
息苦しさに代わり胸によろこびの波が、押し寄せてくる。
急いでふりかえり、フードをおろせば、
グレイはひどく驚いた顔をした。
「ミュア」
「グレイ! 会いたかった!」
とびつくように抱きつき、愛しい身体を抱きしめる。
グレイは、困惑した表情だ。
「どうして……」
「デリアが教えてくれたの、デリアはあなたが
明日、国を出ると言ったわ」