Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
すぐに強くひきよせられ、きつく抱きしめられ、
切なげなグレイの声が、ミュアの名を苦しげに呼ぶ。
熱をもった唇が、ミュアの唇をふさぎ、二人の吐息が絡みあう、
何度も、何度も。
グレイの唇が首筋を伝いおりて、解かれたリボンの先に
赤い花びらのような跡を残し、二人を隔てるものをすべてなくして、
肌と肌をあわせれば、歓びの涙がこぼれた。
それでも、グレイは最後のしるしを刻むのを躊躇ったが、
ミュアはそんなグレイの腕にやさしくふれながら言葉を紡ぐ。
「私が不妊のお茶を飲んでいたことは知っているでしょう、
だから心配しないで。」
「連れていけるならそうしたい。だが、私は、
島の血が流れているから許されたが母の故郷の島国は
他国人を認めない閉鎖的な土地で、政情も不安定、
内部の争いも多いところだ。
そんな場所には、やはり連れてはいけない」
「ええ、私が純潔でないと知ったら、ウォーレスは
私を王妃にせず、きっとターラントへ返すわ。
ターラントへ帰る、それが一番いいと私は思うの。
妊娠はしないわ。自分の身体は自分が一番よくわかってる」
「ミュア」
「これは、私が故郷(くに)に戻るために必要なこと。
そして、私がアルメリオンの王妃だったという思い出を
完璧にするためにも必要なの。」
額にグレイのキスがおちてくる。
あわせた指先が、より深く絡みあう。
「すばらしい王妃だったよ、君は」
「そうよ、私は、完璧な王妃よ。
グレイ=デュア=アルメリオン国王に身も心も愛された、
ただひとりの王妃」
唇と唇がふれあって、切なげな吐息と声が月明かりの中に
とけていく。
「くっ……ミュア」
「あっ……」
あがる息の合間に、歓びの声がもれて、別々だと思っていたものが
ひとつになった。
「ミュア……愛してる」
「私も…… 愛してる…… グレイ、あなたを忘れないわ」