Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜


    「いやいや、わざわざオゥバン殿が、足をはこんで
     くださるとは、恐縮いたしました」
    「トラブルの原因がはっきりし、誤解がとけてなによりです」
    「こちらの手違いとは気づかず、申し訳ない。ですが、
     今回のトラブルに感謝ですな、お目にかかりたいとずっと
     思っていましたから。
     他国には行かれるのに、なぜアルメリオンだけは、
     と不思議に思っていたのですよ」
    「任せている男が優秀だからですよ、たしかに私が興した商売だが、
     商いはひとりでできるものではありませんからね」



 グレイの言葉に、卸し問屋の元締めは、” 確かに “ と頷き、
 相好をくずした。

 手紙では、難癖をつけ、ひどくうるさく契約を無効にすると
 わめいていたくせに訪ねてきたグレイの姿をみるなり、
 あっさりと非を認め、今まで以上の取引を申しこんできた。
 

  ー ー なるほど、俺を誘いだすのが狙いだったか。


 腹のなかで、グレイはため息混じりの苦笑をする。



 そんなグレイの心情など関わりないとばかりに、元締めは、
 喜びではち切れんばかりの顔にさらに、好奇心と
 自分の欲とをうかべ、勢いよく身を乗りだした。


   
    「どうですかな、今晩は、我が家ですごされんませんか?」
    「いや、午後の船でもどります」
    「そんなこと仰(おっしゃ)らず、” 王族もかくや “
     とばかりのもてなしをさせて頂きますから」



 王族、の言葉に再びグレイは、ひそかに苦笑いをする。


   
    「ありがとうございます。ですが、途中で船をのりかえて、
     西大陸にむかうことになっていましてね。
     どうしても外せない商談があるものですから」



 それでも、と元締めは食い下がったが、やんわりとグレイに断られ、
 とうとう諦めのため息をもらした。



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