Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
元締めがいかにも残念そうなのは、自慢の娘とグレイを
ひきあわせようと思っていたからだ。
彼はしげしげと、目の前に座る紅い髪の若者を見る。
紅い髪は南の人間にはある色だが、彼は島の人間らしくない。
日に焼けてはいるが、島国特有の浅黒さはなく、
目鼻立ちもローム大陸の人間のものだ。
男でも見とれてしまうほどの整った顔立ちに、引き締まった身体。
突然、彗星の如くあらわれて、従来の国と国との商売の地図を
描き変えてしまうほどの力をつけてきた、将来有望な若者。
二十代後半ときいたが、まだ独り身らしい……。
だが、あまり強引なことをして、大切な今の商談そのものを
潰してしまっては、元も子もない。
「是非とも、また近いうちに我が家に、いえ、
まずはアルメリオンに足をお運びください」
元締めは愛想よく微笑むと、今すぐにでも “ 娘婿に ” と
言いたいのをこらえ、波止場へと戻っていくグレイを見送った。