Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
「トラビス!」
少年のよんだ名におどろきふりかえれば、三歩ほどうしろに
トラビス=リードが、グレイ以上に驚いた顔をして立っていた。
「グ、グレイ」
ものをポトリと落としたような声でそうグレイの名を呼んだトラビスに
駆けよった少年は、驚き固まっている男ふたりを見くらべて、
首をかしげた。
「トラビス、このおじさんを知ってるの?」
「トラビス、この少年は?」
グレイと少年が同時に発した問いかけにトラビスは、
はっと顔をひきつらせる。
だがすぐに、ははは、といかにも胡散臭い笑いを顔中にひろげて、
少年にむかって話しかけた。
「ジェイミー、突然いなくなるから、ご婦人方が
心配しているよ。
マーケットにもどるんだ」
言いながらトラビスは、少年の肩を、波止場のはずれにある
マーケットの方へとおしだした。
「はい」
しぶしぶといった感じで少年がマーケットの方へ足をむけ、
小走りに走り去るのを見送ってトラビスはグレイの方をむくと、
襟元を締め上げんばかりに詰めよって、低めた声をだした。
「どうして、こんなところにいるんだ!」
「いちゃ、悪いか」
「悪いだろう! ここはアルメリオンだぞ」
まあ、たしかにそうだと思いながらグレイは肩をすくめる。
「ちょっとした取引のトラブルがあって、どうしても
ここに来る必要があったのさ」