Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
いかにも気のない返事をかえし、グレイは少年が走り去った方を
見ると、今度は自分からさらに詰めよって、
ゴールド・アンバーの瞳でトラビスを見据えた。
「それより、あの少年……お前とどういう関係だ」
ぐっとトラビスが息をつめる。
「あの子は……」
そう言いながら、マーケットの方角にちらりと視線をむけた彼は、
突然 ” わっ! “ と声をあげると、グレイの腕を掴み、
無理やりマーケットとは反対方向へ、グレイの身体を向けさせた。
「グ、グレイ、このすぐ先に、おいしいコーヒーをだす
カフェがあるんだ。一杯おごるよ!」
グレイの背中をぐいぐいと押し、歩き出しながらそう言い、
早足になり、強引にすぐ近くの建物の角を曲がる。
そしてしばらく歩くと、トラビスはまた突然、声をあげた。
「あ、用事を思いだした。
グレイ、君、さきに行っていてくれたまえ、ほ、ほら、
あそこに見えるだろ道にまで丸テーブルをだしているあの店だ!」
叫ぶようにそう言い、言うなり、いま来た道を駆け戻っていく。
「なんなんだ?」
グレイはあっけにとられた。
あっけにとられながらも、グレイはぐっと深く帽子をかぶりなおし、
先に見えているトラビスが示した店にむかって、歩きだした。