Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜


 いかにも気のない返事をかえし、グレイは少年が走り去った方を
 見ると、今度は自分からさらに詰めよって、
 ゴールド・アンバーの瞳でトラビスを見据えた。


   
    「それより、あの少年……お前とどういう関係だ」



 ぐっとトラビスが息をつめる。


   
    「あの子は……」



 そう言いながら、マーケットの方角にちらりと視線をむけた彼は、
 突然 ” わっ! “ と声をあげると、グレイの腕を掴み、
 無理やりマーケットとは反対方向へ、グレイの身体を向けさせた。


   
    「グ、グレイ、このすぐ先に、おいしいコーヒーをだす
     カフェがあるんだ。一杯おごるよ!」



 グレイの背中をぐいぐいと押し、歩き出しながらそう言い、
 早足になり、強引にすぐ近くの建物の角を曲がる。



 そしてしばらく歩くと、トラビスはまた突然、声をあげた。


   
    「あ、用事を思いだした。 
     グレイ、君、さきに行っていてくれたまえ、ほ、ほら、
     あそこに見えるだろ道にまで丸テーブルをだしているあの店だ!」



 叫ぶようにそう言い、言うなり、いま来た道を駆け戻っていく。


   
    「なんなんだ?」



 グレイはあっけにとられた。


 あっけにとられながらも、グレイはぐっと深く帽子をかぶりなおし、
 先に見えているトラビスが示した店にむかって、歩きだした。




< 168 / 192 >

この作品をシェア

pagetop