Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
赤いギンガムチェックのテーブルクロスをかけた丸テーブルと椅子を
明るい道すじにまでひろげた店には、そこそこ客がいて、
一番端の人気のない席を選び、グレイは腰をおちつけた。
すぐに店員が注文を聞きにくる。
コーヒーを注文し、店員が去ると彼はゆったりと深く背もたれに
背中をあずけ、足をくんだ。
トラビスの態度があきらかにおかしい。
それに、あの少年……
今であった自分と同じ髪色の少年の姿を思いえがき、グレイはふと
少年の顔立ちが、幼いころの自分に似ていたように思った。
なんともしれないざわざわとした気持ちが、胸の中にひろがりはじめる。
年齢は五歳? いや六歳?
髪のと目の色が一緒だからそう思うのだろうか。
いやそうだとしても……
少年のかわりに、今度はプラチナ・ブロンドの髪をひろげた美しい女性の
姿が心にうかび、グレイはきつく、目を閉じた。
思いだせば今も、苦しい。
後悔が鋭利な刃(やいば)になって、グレイの身を切り刻む。
コトリとテーブルにカップが置かれる音がして、目を開いたグレイは、
愛想笑いをうかべた目の前の店員が、グレイにではなくグレイの
後ろにむかって
「いらっしゃいませ、おつれさまですか」
というのを聞いて、はっとふりかえった。