Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜


 その時、港の高台にある塔の鐘が、午後三つ時を知らせはじめた。
  
  
  船に戻らなければならない。

 西大陸の商談は、さっきの商談以上に大切なものだ。


 だが、このままここから去っていいものだろうか。



 グレイは目の前のミュアをみつめる。


 このまま拐って(さらって)船にのせてしまおうか、
 手をとり一緒に行こうと言えば彼女はついてくるだろうか……。



 だが、

    
    「私、もう行かなきゃ、息子をトラビスとクノエに
     預けたままなの」



 そう言いながらミュアはたちあがる。


   
    「あなたの元気そうな顔がみれてよかったわ、商売はうまく
     いってるってトラビスから聞いていたけれど、本当にそうなのね。
     あなたの姿をみればわかる。」




 そう言いながらミュアはグレイの視線から逃げるように、顔をそむける。


 
 ガタン!とグレイの座っていた椅子がたおれて、
 なにごとかと他の客がこちらをむいたが、
 グレイはそんなことには目もくれず、大股でミュアのそばまでいくと、
 彼女を抱きしめた。


   
    「もう、船に戻らなければならない、だけど……」




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