Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜
 

    「だめよ」


 グレイが言いかけた言葉をミュアは急いで止めた。


   
    「何も知ろうとしないで。 お願い、グレイ。
     あなたが知ろうとするなら、私は、誰も探しだせないような
     ところに行くしかないわ」
    「……」
    「お願い……」



 ミュアの手が背中にまわり、ぎゅっとグレイを抱きしめる。

 一度強く抱きしめて、彼女はぱっと身体を離した。


   
    「私は幸せだから、なにも心配はいらないの。
     言ったでしょ、私はあなたを忘れないって。
     忘れようとしたって、忘れられないように、私がしたの。
     だから、今はそれで十分なのよ」



 微笑み、パラソルを手にとると、ミュアはまるで自分の姿をかくすように、
 グレイの前にさっとパラソルをひろげた。


 
 そしてくるりと踵をかえす。


 呆然と立ちすくむグレイを残し、ミュアは歩み去っていく。



 戸惑いを浮かべたゴールド・アンバーの瞳を陰らせて、
 グレイはその後ろ姿を見送っていたがぐっと強くこぶしを握り、
 ふっと口端に、笑みをのぼらせた。



 瞳から悲しみの色は消えていなかったが、それは力強い確信の笑みだった。





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