Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜


 もう二つと三の半(約三十分)もすれば、トラビスが青年と
 花嫁になる娘をともなって到着するらしい。

    

    「まあ、私、花嫁のベールが入った箱を馬車に置いてきて
     しまったようですわ。
     申し訳ありませんが、取ってきていただけませんか、ミュアリス様。
     私、ヴェイニーに伝えておくことがあって、ちょっと
     台所に行ってきます」




 わかったと返事をし、できあがったブーケを祭壇近くのテーブルに置いて
 外へでて、館の前に停まっているクノエが乗ってきた馬車の扉をあけて
 中をのぞきこんだミュアは、首をかしげた。


 箱なんてどこにもない。


 馬車の中に入り、座席の下もさがしたが、やはりなかった。


   
    「クノエの勘違いかしら」


 
 置いてきたと言っていたけれど、クノエのことだもの、
 ちゃんと運びこんだのかもしれない。


 そう納得して居間に戻ってくると、そこにはすでにトラビス=リードの
 姿がある。


   
    「トラビス? どうやって来たの。外にいたけど馬車はこなかったわ」
    「空とぶ絨毯(じゅうたん)で」
    「まあ、何を言ってるの」



 そう言ったけれど、なんだかトラビスの胡散臭い笑顔とその答えがみょうに
 あっているような気がして、ミュアは笑いだしてしまった。


 くすくすと笑っているミュアの後ろからクノエがしずかに歩いてきて、
 ミュアの頭に花嫁のベールをのせる。


 驚いてミュアは笑いをとめた。


   
    「あら、やっぱりここにあったのね、馬車にはなっかたもの。
     でも、これをかぶるのは私じゃなくて、花嫁よ」
    「いいえ、これでいいんです、ミュアリス様」




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