Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 
 ミュアは呆れた。
  この人は……、まったく……。


 その時、ガチャンと大きな音がした。

 ジェイミーが水盤を落っことし、足元を水で濡らしながらこれ以上は
 ないというほど目を見開いている。

 その目にみるみるうちに涙が盛りあがり、ミュアにむかって走ってくると、
 ジェイミーはミュアにかじりついた。


   
    「母上がアルメリオンからいなくなるの? そしたら僕は
     どうなるの?」



 ミュアのドレスを小さな手で握りしめ、ジェイミーがわっと泣きだす。

 そんな彼を、グレイはひょいと抱きあげた。


   
    「もちろん君も一緒だ、私たち三人で島で暮らす」
    「ひっ、ひ、ひっく、ほっ、本当?」
    「本当だ、君は息子に、私は父親になる」
    「ち、父上?」
    「そうだよ、ジェイミー、私は君の本当の父親だ。そうだろう?ミュア」


 
 ジェイミーを抱きあげたまま、グレイがやさしい顔をミュアにむけた。


   
    「グレイ……」
    「全部、トラビスとクノエから聞いた。
     君は探るなと言ったが、なにもしないでいられるわけがないだろう、
     俺はもう、ジェイミーに会っているんだから、俺そっくりな彼にね」
    「すまないミュア、危うくグレイに殺されかけてね」



 トラビスが、肩をすくめる。

    

    「愛しいクノエを未亡人にするわけにはいかないから」
    「あら、全然、かまわなかったのに」
    「クノエ〜」



 クノエらしいきりかえしと情けないトラビスの声に、ミュアの顔に
 やっと笑みがうかんだ。




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