Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜

 アランが去っていくミュアを見ながら、ぽつりと呟く。


   
    「お美しい……」



 その呟きにランドルの眉がぴくりと動いた。
 惚けたようにミュアの後ろ姿を見ているアランを見て、ランドルは内心、
 ため息をついた。


 ミュアは兄や両親の前でも、気品ある王女の態度を崩さないが、ランドルは、
 あれはミュアの努力の賜物(たまもの)で、ミュアの本質は別物だということを見抜いて
 いる。

 だって、婚約する前のミュアを知り尽くしているから……。
 ちなみに、ミュアの両親もランドルと一緒だが、三人はきちんとミュアを
 一人前のレディとして扱うようにしている。


  
   「まあ、でも、私は以前のミュアの方が好きだな」
   「はっ? なにか言われましたか」


 
 思わず口から出た言葉に苦笑いし、


   
   「なんでもない、さっさと行こう」


 
 そう言って、ランドルは歩きだした。
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