Lie × Lie 〜 アルメリア城恋物語 〜


 ミュアの足元で身を低くしているのは、斑(まだら)の豹だ。


 南方の島に生息するネコ科の生き物だが、オーガと違って角はないし、
 首下や足先の毛も長くない。

 オーガより小柄で、身体に茶と黒の斑点がある。


   
    「ムタフ、じゃまをするな」



 ミュアの腰を抱いたまま、グレイが不機嫌な声で言っても、
 ムタフは動じることもなく、賢そうな目でじっとミュアとグレイを見つめ、
 そしてふぃと部屋の入り口に視線をむけた。

 
 はっとミュアはグレイの胸を押す。
 そして、自分の腰に巻きついているグレイの腕も外そうとしたとき、
 ばたばたと元気な足音が聞こえ、勢いよく部屋の戸があいた。


   
    「母上!」



 ミュアの顔を見て、ぱぁと喜びをあらわにしたジェイミーが、
 突進する勢いでベッドにむかって走ってくると、ミュアに抱きつく。


   
    「おはよう! 母上」



 元気よくそう言って、ぐりぐりと自分の頬をミュアの頬にすりつけた
 ジェイミーは、ぱっと顔をあげると、くるっとふりむいた。


   
    「父上…… おはようございます」



 若干(じゃっかん)低めた声で、真面目な顔で、そうあいさつし、
 ジェイミーは、まだミュアの腰にかかっているグレイの手に、
 冷ややかな視線をむけた。




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